マルチナイト処理 (無公害液体窒化)multinite

マルチナイト処理とは?

窒化処理加工にはガス窒化の他に短時間で処理できる塩浴窒化があり、その効果は数多くの利点を持っていることが広く知られています。元来この方法は、KCN(シアン化アルカリ)を組成成分とし、劇毒物の塩浴剤の取扱いはもとより、処理製品の洗浄水工業廃水処理能力消去後の廃棄剤(スラッジ)等に、多量のシアンを含有し、近年ゆゆしき社会問題となりました。この問題解決の為に、ノーシアン高性能を目標として長い間研究開発され新しい塩浴法として無公害液体窒化=マルチナイト処理が生まれました。

MULTINITEプロセス無公害液体窒化

本処理法は前記の目的の為に開発された無公害塩浴窒化であるだけでなく、従来の塩浴窒化(軟窒化)に比較し性能も画期的に強化されました。本処理法に使用される処理剤は、厳格な研究検査の結果、実際的に無毒である事が確認されましたシアヌル酸〔(HOCN)3〕、又はイソシアヌル酸〔(HNCO)3〕に酸化リチウム〔Li2O〕を化成して出来るシアン酸リチウム〔LiOCN〕を主要有効成分とした強力な窒化剤を使用しております。

反応式   4LiOCN=2LiCN+Li2CO3+CO+2N

マルチナイト処理の窒化層の性質

マルチナイト処理は、使用温度が広いが、通常鋼のA1変態点よりはるかに低く、520℃から570℃にて操業されており、LiCNOは熱分解により、COと発生期の窒素Nを生成し処理物はこのCOとNにより浸炭と窒化の作用を受けるが、処理温度が低い為窒化反応が主となります。処理製品の表面は化合物層(Fe3C,Fe3N,Fe4N)と、その下層に(Fe4N)を形成します。尚上記組織は炭素鋼の場合で、Cr、Al、Mo等含有の合金鋼では、種々の組織になります。

化合物層は優れた対磨耗性、耐焼付性、耐かじり性を示します。また内部の拡散層は材料の疲労強度を著しく増大します。

窒化層の断面組織

断面
S35C × 400

断面
SCM440 × 100

マルチナイト処理の表面硬さと窒化層の厚さ

マルチナイト処理の表面硬さと窒化層の厚さ

耐摩耗性

被処理材の耐摩耗性を未処理の物と比較しました。(神戸工業試験場にて)

耐摩耗性

西原式磨耗試験

材質:S50C
荷重:250kg
回転数:800rpm
スベリ:0

NO.1 未処理

NO.2 マルチナイト処理
処理温度 560℃
処理時間 4時間
処理品の面圧 123.6kg/mu

NO.3
処理温度 560℃
処理時間 4時間
処理品の面圧 178.4kg/mu

疲れ強さ

炭素鋼の疲れやすさを未処理物と処理物について比較した結果、疲労限は著しく増大します。(神戸工業試験場)

疲れ強さ

材質 S50C

○ 未処理
● マルチナイト処理
処理温度 560℃
処理時間 4時間

疲労強度上昇率
低炭素鋼   80〜100%
中炭素鋼   60〜80%
低炭素合金鋼30〜35%
ステンレス鋼 25〜30%
鋳鉄      20〜60%

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